教育×読書 賢い子はスマホで何をしているのか(1)

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1 プロローグ 要約

 ゼロリスク以外は否定される教育現場

 毎年、交通事故で500,000人前後の死傷者が出るが、それを理由に「自動車は危ないから、使用禁止にせよ」と言う人はいないはずだ。

 包丁で指を切るのは日常茶飯事だが、「危ないから入手禁止にせよ」と怒る人もいないはずだ。

 このようにリスクがゼロなんてものは存在しない。メリットとデメリットをはかりにかけて、メリットの方が大きければ、それを使う。ただし、デメリットを極限まで減らす方法だけは徹底的に考える。そういうふうに社会は動いている。

 ところが、なぜか教育に関しては、リスクがゼロでないと許せない人が多い印象がある。例えばクラウド問題、一般社会ではもはやクラウドで情報を管理するのが常識だ。文部科学省も「クラウド・バイ・デフォルト」といって、クラウドを活用することで効率的なICT環境を整えるよう呼びかけている。

 でも、実際には、自治体に個人情報保護条例があって、学校は子供たちの学習データをクラウドにアップできない。情報漏洩の恐れがあるということだ。

 クラウドにあげなきゃ安全なのかと言うと、USBを先生が紛失する事件が度々起きている。東日本大震災では学校が津波で流されて、子供たちの大切なデータが全て消失しまった。アナログに管理したってリスクは存在するのだ、と言う点が完全に忘れ去られている。

デジタルとアナログは対立するものではない

 著者は、新しいテクノロジーを使って子供たちの想像力や表現力を高める活動のため、デジタル教科書やプログラミング教育の導入について、多くの有識者たちと協議してきた。しかし、議論になる前に終わってしまうことが多かったという。

 これからの教育にはデジタルが重要だと言うと、必ず「じゃあ、アナログはいらないのか」と反対される。想像力が重要だと言うと、「じゃあ、基礎学力は必要ないのか」と返ってくる。デジタルにもアナログにも一長一短があるから使い分ければいい。基礎学力は必要だがAIにはできない創造性を育むことにも力を入れてはどうかと言っているだけ。

 ところが「基礎学力+創造力」ではなく、「基礎学力VS創造力」という二項対立にもっていかれる。そのため議論にならないのだ。

2感想

教育と関連して

 著書が述べるように教育の世界ではリスクが0でないと許せない人が多いように感じる。1人1台のタブレット端末が配付されたにも関わらず学校でしか使えない。端末の持ち帰りは、壊れてしまう可能性があるから禁止。事情があり持ち帰る場合も、全家庭にインターネットに接続できる環境が無いから家庭でインターネット環境に繋ぐのは禁止など。少しでもリスクがありそのリスクが解消されない限りは現状維持となってしまっている。

 1人1台端末の配布は、子どもの学び方や教師の働き方を大きく変えるチャンスだと思う。しかし少しのリスクも取らず現状維持のままではせっかくのチャンスを不意にしてしまう恐れがある。各教育委員や地方自治体にはリスクをとり大きな変化をもたらすきっかけにしてほしいと思う。

 著書はデジタルとアナログについてや、創造性、基礎学力についてなど、「議論になる前に終わってしまうことが多かった」と述べている。私自身も職場で校務のデジタル化を図り効率化しようと提案したことがあるが、「全員が使えないからやめよう」「すぐに変えるのは厳しい」と現状維持維持のままになってしまったことがある。新しく取り組むことであるから全員ができないのは当たり前だし、徐々にそのやり方に慣れていけばよいはずだ。しかし、最初からできないと決めつけて取り組まれることは無かった。

 今回の例だけでなく、学校現場では、0か100かの二項対立になってしまい結局、新しいものが取り入れられない、現状維持ということになってしまうことが多いように思う。

 予測不能な社会を生きる子どもたちを育てる教師こそ、変化を恐れず様々なことに挑戦する必要があるのでは無いだろうか。