教育×読書 「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない(1)あなたの声かけは大丈夫?

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 「ちゃんとしなさい!」「言うことを聞きなさい!」子どもに正しい行動をしてほしいときについついこんな声かけをしていませんか?

 言ってもあまり効果無いことが分かっていてもついつい言ってしまう言葉ですよね…。

 今回は、子どもの可能性を奪ってしまう声かけを紹介します。

 自分の言動を自覚し、より良い声かけを考えましょう!

要約

 「子どもの可能性を広げたい」「子どもにはのびのびと育ってもらいたい」そう考えている保護者の方は多いだろう。

 時に疲れてしまうこともあるかもしれないが、どんな親だって、子どもの将来がより良いものになるように考えて、愛情を持って接している。

 しかし、子どもの為を思って口にした、ちょっとした言葉が逆効果になってしまうことを知っておく必要がある。

幼少期に聞いた言葉の数が、子どもの将来を決める

 幼少期の声かけがいかに大切であるかを示してくれる良書に『3000万語の格差』(ダナ・サスキンド著 掛札逸美訳・高山静子訳 明石書店)がある。

 タイトルの『3000万語の格差』は、1990年代に社会学者のベティ・ハートとトッド・ディズリーが行った研究から来ている。簡単に言うと、貧困層の子供たちが3歳までに聞く言葉の数は、社会的に成功している層の子供たちと比べて3000万語ほど少ないとする研究である。

 豊かな言語環境があれば社会的に成功しやすいということである。

 しかし、言葉の数が単に多ければいいと言うわけではない。社会的に成功している家庭では、豊かな語彙、ポジティブな言葉を使っていたということが研究の結果から分かっている。

 親がどのような言葉を使うかによって、子どもの将来を左右すると言っても過言ではない。

可能性を奪う言葉「拮抗禁止令」と「13の禁止令」

 親は子どもが生まれた瞬間から、その子に対して様々な制限や禁止を耐えている。これ自体は普通のことだ。社会の中で生きていくために、幸せに過ごすために、必要なルールや価値観を教える。これを「拮抗禁止令」あるいは、「禁止令」と言う。

 子どもが自分で判断できるようになる前に植え付けられるため、その子の人格や人生そのものに大きな影響与える。

 幼児期に親から無言のうちに与えられる「飛行禁止令」の中で、特に厄介なものとされるのが5つある。これらを「ドライバー」と呼ぶ。これらのドライバーは、特に脅迫的に「こうしなければならない」と感じやすい代表的なメッセージである。

拮抗禁止令

1 完全、完璧であれ

→繰り返ししっかりするように教えたり、ちゃんとしてないと認めないと言う態度から伝わるメッセージ。これをドライバーとして持っていると、自分にも他人にも厳しくなり、他人の欠点が目についてしまう。

2 他人を喜ばせ、満足させよ

→辛い時や悲しい時も、笑顔でいることを求めることで伝わるメッセージ。他人に親切にして喜んでもらわなければ自分には価値がないと感じ、自分の気持ちよりも他人を優先しがちになる。

3 努力せよ

→「一生懸命やりなさい」と繰り返し教えたり、常に努力することを求めることで伝わるメッセージ。常に努力をしていないと認められないと感じ、楽をしたりリラックスしたりすることが苦手になる。

4 強くなれ

→「なくな」「我慢しなさい」「そのくらい何でもない」「痛くない」と言い続けることで伝わるメッセージ。喜怒哀楽をあまり出さず、強さを示そうとするようになる。

5 急げ

「早くしなさい」「もっと急げなさい」と繰り返し言うことで伝わるメッセージ。じっとしていることができず、いつもせかせかと動き回るようになる。時間を無駄にするようなことが許せず、スケジュールが埋まっていないと不安になる。

 拮抗禁止令として挙げられている言葉自体は、子供がこれから先、社会に出て困らないように、幸せに生きていけるように必要なものとして親が伝えているメッセージある。

 しかし、過度になると子どもを苦しめることになるのがわかるだろう。

 また、気候禁止令は、「13の禁止令」と結びつくと子どもの思考や行動をさらに縛ることになる。

13の禁止令

1 存在するな

→「お前さえいなければ」といった言葉で、不幸の原因は自分なのだと感じ、生きるに値しない存在だと思ってしまう。

2 何もするな

→しつけが厳しかったり、過保護または過干渉だったりして行動を制限されると、大人になってから自分に何をしていいかわからず「指示待ち」の人になる。

3 成長するな

→甘やかされ、自立を否定されて育つと、「子どものままいて、何もできないほうがいい」と思うようになる。

4 感じるな

→よく我慢をさせられたり、親から無視されたりすると、欲や感情を抑えるのが癖になる。

5 お前であるな

→「本当は男の子が欲しかった」「女は損をする」といった言葉で、性別やアイデンティティーを否定されると、周りの評価や常識に左右されるようになってしまう。

6 子どもであるな

→「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」といった言葉で自立を促され、自由に過ごさしてもらえないと、責任感が強くなりすぎる。

7 近寄るな

→「今は忙しい」「後で」「静かにしなさい」といった言葉で、親から距離を置かれたりコミニケーションを拒絶されたりすると、何でもひとりで我慢し、悩みやストレスを抱え込むようになる。

8 考えるな

→「黙って言うことを聞け」「口答えするな」と怒鳴ったりヒステリックに叱ったりすると、考えることをやめてしまう。

9 成功するな

精子を褒めてもらえず、失敗したときに慰められたり、優しくされたりすると「自分は成功できない人間だ」と思い込むようになる。

10 自分のことでほしがるな

→親が経済的に困っていたり、我慢しているところを見ることで、素直に欲求を口に出せなくなる。

11 健康であってはいけない

→病気の時だけ優しくされたり、病弱な親や兄弟の面倒を見ていたりすると、病気や怪我、突飛な行動などで気を引くようになる。

12 重要な人になってはいけない

→何をしても親の反応が薄く、認めてもらえないと「自分は重要であってはいけない」と思い、目立たないよう、責任ある役につかないようになる。

13 所属してはいけない

→「あのこと遊んではダメ」「この子と遊んであげて」のように親が友達を選ぶことで、同世代になじみにくく、自分から言い出せずグループに溶け込まないようになる。

 

 言葉だけでなく「反応」もメッセージになる。実際、これらの禁止令に全く関係がないと言える人はなかなかいないと思われる。いけないと思いつつも、吐いてしまうと言う場面もあれば、良かれと思って言ってることもあるだろう。

 いずれにしても、知らず知らずに子どもを縛り、子どもの自己肯定感を下げたり自分で判断・決断ができないようにしている。

教育と関連して

「自主的に行動できる子どもを育てたい!」「自立できる子になってほしい!」と思い、日々の学習活動を行なっています。しかし、私自身を振り返ると、期待する姿に対して、発しているメッセージは真逆の効果を及ぼしてしまっていると反省しました…。拮抗禁止令のほとんどが当てはまっていました。

 そもそも今の学校教育は求められるものが多く、教師も子どももゆとりがないように思います。ゆとりがあれば1人1人の子に向き合い、伸び伸びと育てることができると思います。しかし、ゆとりが無い今、「せめて迷惑をかけない子になってほしい!」「ルールを守れる子に!」と逸脱しない子を育てることに必死になってはいないでしょうか。

 今のシステム上、教師がゆとりをもって1人1人に合わせた教育を行うのはなかなか難しいと思います。まずは、自身が発している「子どもの可能性を奪う声掛け」を自覚し、少しずつ変えていく必要があります。

 自分を振り返り、子どもが自分で考えて動けるようなことばがけを!