教育×読書 自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学(2)2種類の実行機能とは?
自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学、第2弾です。
前回は非認知スキルと認知スキルについてまとめました。
今回は実行機能の2つの種類の違いについてまとめていきます。
要約
子供に必要な2つの自己機能
実行機能には2種類ある。
感情面を担う実行機能と、思考面を担う実行機能だ。それぞれ、「感情の実行機能」、「思考の実行機能」と呼ぶこととする。
まず、感情の実行機能について、これは本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を達成する力だ。例えば、喉が渇いたときに水を、お腹が空いた時に食事を、買いたいものがあるときにお金を目にすると、私たちは今その瞬間に直ちに手に入れたくなる。その気持ちのままに直ちに手に入れても良い場合もあれば、一時的に欲求をコントロールする必要がある場合もある。
ダイエットをしている人には、体重を減らすと言う大きな目標がある。その時に食べ応えがあり、満足感を与えてくれるハンバーガーを目にすると、それを食べたい気持ちになるだろう。しかし、目標を達成するためには、その気持ちを抑えて、サラダを食べる選択をしなければならない。
他にも、既婚者が、円滑な結婚生活を送ると言う目的を達成するために、目の前にいる魅力的な人の誘惑に打ち勝つことも、感情の実行機能が必要な例だ。
思考の実行機能
もう一つの実行機能である思考の実行機能について、感情の実行機能と異なり、思考の実行機能には欲求や衝動が関わらない。こちらの実行機能の大事な働きは、ついつい無意識的にやってしまう行動、習慣、癖などをコントロールすることだ。
私たちは、一つ一つの行動を意識してやっているわけではない。テーブルの上にあるコップを取ろうとする時、どちらの手を伸ばすか、どのくらい手を伸ばすか、などをいちいち考える事はないだろう。右手の方が近ければ、無意識的に右手でコップをとる。
しかし、ある時右手を怪我していて、コップをつかめないとする。このような場合には、ついつい無意識的にやってしまいがちな右手を伸ばすと言う行動を抑えて、左手でコップを取る必要がある。このように無意識の行動を制御することに思考の実行機能が変わっている。
もう一つ例を挙げてみよう。職場からの帰り道、いつもであれば、職場を出て右へ曲がるとする。ところが、途中でケーキを買って帰るために、職場から出て左に曲がる必要があるとする。この場合、ぼんやりと職場から出てしまうと、右に曲がってしまうかもしれない。今日はケーキ屋さんに行くんだと言う目標達成するために、習慣となっている行動を抑え、別の行動する必要がある。
このように、この思考の実行機能は、新しい状況や、いつもと違う状況などによって必要となってくる。
2つの実行機能の違いは、感情の実行機能が欲求を抑える能力であるのに対して、思考の実行機能には欲求が関係せず、ついついしてしまう行動を抑える働きが重要であると言う点だ。
思考の実行機能の基本要素
思考の実行機能には、2つの基本要素がある。1つは、その状況で必要とされる目標を保つ続けることだ。
実行機能は、目標に向かって自分の行動をコントロールする能力だ。目標達成するために必要な能力なので、目標を見失わずに保ち続ける事は極めて重要である。
例えば、先のケーキ屋さんの例で言うと、「ケーキ屋に行く」と言う目標を忘れてしまった場合、習慣となっている行動をとってしまう。目標を定め、その目標も続けることによって、目標達成できるのだ。
2つ目の要素は、いくつかの選択肢から、1つの行動を優先するということだ。特に、選択されやすい行動と選択されにくい行動があった場合に、必要に応じて選択されにくいことを優先するということだ。
ケーキ屋の例でいうと、右に曲がるという選択肢と左に曲がるという選択肢があり、日頃の習慣によって右に曲がるという選択肢の方が選択されやすくなっている。このような状況の中で、左に曲がるという選択肢を保ち続ける事は極めて重要である。
目標を保つこと、ある選択肢を優先させること、この2つが最も基本的な働きとなる。
以上、2種類の実行機能についてでした。
どちらの実行機能も生きていく上では重要ですね!感情の実行機能が育っていないと自分の本能のままに行動してしまい、良くないことに繋がってしまいます。思考の実行機能が育っていないと、目標を保つことができず成長につながりにくいということになってしまいます。
どちらの実行機能も高い子供の育成を目指していきたいと思います。