特別支援教育 応用行動分析研修を受けて(2)

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  先日、応用行動分析についての研修を受けました。今回は研修記録の第2弾です。1回目では応用行動分析の基本について記録しています。

 今回は、応用行動分析を活用し、不適切な行動をどのように減らしていくのかについて記録していきます。

umi-kaze2.hatenablog.com

 行動分析の4つのルールから導かれる行動低減の方法論

1後続条件(刺激)を工夫する

 行動分析においては、「行動は理由もなく続かない」と考える。この行動を続けさせる理由となるものが、正の強化における強化刺激の提示と負の強化における行動後に嫌悪的な状況の除去となる。つまり、行動が続く理由となる行動後の対応を取り除けば、行動は低減することになる。

 この方法は、消去と呼ばれる。

(例)

1、正の強化による消去

母親がテレビを見ていた→大声を上げた→母親が駆けつけた(母親の追加)

母親がテレビを見ていた→大声を上げた→母親は子どもの視界から消える(母親の除去)

2、負の強化による消去

苦手な課題学習のとき→大声を上げた→休んでよいと言われた(課題の除去)

苦手な課題学習のとき→大声を上げた→「ここまでやってから終わろう」(課題の終了における終結

 正の強化における消去は、強化刺激を取り除くことになるため、1のように、母親が子供の視界から見えなくなることや、言葉がけ等をしないといった対応がその手続きとなる。

 負の強化における消去は、行動が起こっても、先行状況を変更しないことがそれにあたる。

 消去の原理は、実施する際に注意する点がある。消去を実施した直後に消去バーストと呼ばれる現象が一時的に起こることが知られている。

 消去バーストとは、強化を得られないことにより行動の激しさや頻度が増加する現象であり、消去を実施する上で最も配慮するべきことである。

 1、2の例では、消去を実施すると、大声を上げる頻度が上がることが考えられる。

2 先行条件(刺激)を工夫する

先行条件Aのもとで起こる行動Bが強化を受けると、行動Bは、先行条件A下に置いて起こる頻度が上昇してくる。このような時、先行条件Aは、行動Bの弁別刺激になったという。

 ある行動を頻発しやすい子供への取り組みで最も簡単で効果的な方法は、この弁別刺激となる状況から子どもを遠ざけることである。方法論的には先行刺激操作と言われる

  1. 実際の指導では、行動を引き起こす場面に子どもをさらさない
  2. 場面の嫌悪性を大幅に下げる
  3. 理解しやすい指示やわかりやすい環境を工夫する

の3つが挙げられる。

1.「行動を引き起こす場面に子どもをさらさない」

弁別刺激から子供を遠ざける先行刺激操作の典型である。

(例)

・図書室の前を通るときに図書室の壁を蹴ってしまう場合

→蹴ってはいけないことを説明しても行動に変容がない場合、図書室の前を歩かせない導線の工夫ができれば、図書室の壁を蹴る回数は激減する。

・近くにいるA君を突き飛ばすたびに教師注意を受けている場合

→意図的にA君とグループを変えることによって突き飛ばす行動が見られなくなる。

2.「場面の嫌悪性を大幅に下げる」

 先行刺激操作を行いながらその場面での適切な行動の指導と組み合わせる事は、より落ち着いた場面で問題解決に取り組む環境を子供に提示し、学習もスムーズに進めることにつながる。

 この取り組みにおいて重要な点が、「子どもにとって場面の嫌悪性は劇的に軽減されたものになっているか」ということである。

 子どもの側からするとあまり軽減されていないと評価される程度の軽減であれば、この取り組みは有効に働かなくなってしまう。子どもの視点から見た嫌悪性の低減が重要である。

3.「理解しやすい指示やわかりやすい環境を工夫する」

 理解しやすい指示は人によって異なることを理解することが大切である。聴覚からの情報の方が理解しやすい子、視覚からの情報が理解しやすい子など、人によって理解しやすい支持は異なる。

 ステレオタイプの「理解しやすい指示やわかりやすい環境の工夫」に陥らずに子供に情報が明確に伝わる工夫になっているかを振り返る必要がある。

3 行動パターンへのアプローチにおいて工夫する

 先行刺激や後続刺激に対する取り組みは、行動の誘発要因や行動の維持要因を取り除くなどによって行動の起こる頻度に影響与えようとするものであった。ここでの工夫は、発想が少し異なる。取り組もうとしている行動(標的行動)ではなく、その行動以外の行動に焦点を当てようとするものである。

 この取り組みは他行動分化強化と呼ばれている。他行動分化強化の取り組みの原則は、減らしたい行動を強化しない(消去)ことと、標的行動以外の行動を強化することの2つから構成されている。

 実施上配慮すべき点として2つ挙げられる。

 1つ目は、消去の取り組みにおける配慮である。消去バーストが起こることが考えられる。消去バーストによる危険性を回避する視点から、分化強化導入時点では標的行動に対する対応をこれまで通り、あるいは、やや対応の強度を控えめにしながら強化する行動に対する対応(強化)を徹底し、徐々に標的行動に対する評価の撤去を徹底していく場合も少なくない。

 2つ目は「適切な行動に何を選択するか」である。

 他行動分化強化は、代替行動分化強化、不両立行動分化強化、機能的コミュニケーション訓練、低頻度行動分化強化といった様々な種類がある。これらは標的行動の代わりに何を強化するかといった点でのアイディアの相違から分かれていったものである。

 

以上。不適切な行動をどのように減らしていくのかについてでした。

次回は行動分析における行動形成の基本についてまとめたいと思います。