特別支援教育 応用行動分析研修を受けて(3)

にほんブログ村 教育ブログへ

 応用行動分析についての研修のまとめ第3弾です。1回目では応用行動分析の基本について、2回目は応用行動分析を活用した不適切な行動の減らし方についてをまとめました。

umi-kaze2.hatenablog.com

 今回は、行動形成までの流れと実際の指導で活用できる方法について記録していきます。

行動分析における行動形成の方法論

1 行動形成の基本

 行動面の指導が検討される場合は、子供の特定の行動型が多いことや不適切な場面で行動が起こることが多いが、子どもの行動の持続時間や起こる頻度がある基準に達しないために検討されることもある。このような場合、行動形成の方法について理解しておく必要がある。

 行動形成に際しては、使用する予定の強化刺激が、行動を強化するかを評価しなければいけない。それと同時に、同じ強化刺激を使い続けると飽和(強化力を失う)という現象が起こることも確認しておく必要がある。

 つまり、強化刺激のバリエーションを用意する事は指導を継続属する上で重要となる。

強化刺激の例

1.食べ物

→お菓子、グミ、プリン、ジュース、アイスなど

2.感覚

視覚、聴覚、触覚、嗅覚、筋運動感覚など単一あるいは複数の経験や提示

→万華鏡を見る、ぬいぐるみを撫でる、音楽を聴く、好きな匂いを嗅ぐなど

3.物や活動

→玩具や遊具、シール、ゲーム、体を使った遊び、キャッチボール、パズルなど

4.社会的賞賛や役割の付与

→笑顔、言葉がけ、感謝、賞賛、言語のフィードバック、接触、特別な役割や係、賞状など

5.ポイントやお金

→ポイント、お駄賃、トークンなど

 強化刺激の例を示したが、これは全てが行動を強化すると言うものではなく、あくまでも行動が増加した場合に強化刺激となることを確認する必要がある。

 「1.食べ物」「2.感覚」の強化刺激は、それ自体が強化する力を持つと考えられている一次性の強化刺激。「3.物や活動」「4.社会的賞賛や役割の付与」「5.ポイントやお金」は、一次性の強化刺激と同時に使う中で、強化力を得てくる二次性の強化色と考えられている。

2 行動形成の3つの基本技法

 行動を実際に形成していく上での3つの基本技能は、1課題分析2チェイニング3プロンプティングとフェーディングである。

 行動形成において最も重要となるのは「課題分析」である。指導する行動が、どのような行動のつながり(行動連鎖)によって構成されているかを明らかにする作業が課題分析である。

 

課題分析の例(自宅から学校へバスで移動するとき)

  1. バス用のICカードのホルダーを首からかける
  2. 家を出る
  3. 最初の信号で一旦止まって左右確認
  4. 青なら渡り、赤なら待って、青で渡る
  5. バス停まで行き、○番線のバスを待つ
  6. ○番線のバスが来たら、ICカードをかざしてバスに乗る
  7. 好きな場所が空いていたら、座る
  8. 次は「〇〇です」と聞こえたら、ボタンを押す
  9. プリペイドカードを家出して降りる
  10. バス停から学校まで歩く
  11. 着いたことを教師に報告する

 課題分析をもとにした指導を始める際に確認すべき事は、課題番号の行動が、支援なしで自分でできるかできないかについてである。

 すべての項目が支援なしで自発できているのであれば、この行動連鎖からなる行動は、1人で完結していることになる。1カ所でも自発しない行動があれば、その前の課題を終えることを手がかりに次の行動が出るように支援したり(プロンプティング)、課題分析をより詳細にすることで出現しなかった行動が、手がかりを明確にしたりすることで出現するように援助し、行動後には明確に強化操作を行う。

 このように連鎖が完成していない行動連鎖をつなぎ直すこと「チェイニング(連鎖化)」という。

 チェイニング(連鎖化)の過程で行動が自発するように手がかりを出すことをプロンプティングと呼んでいる。その際に用いるプロンプト(プロンプティングに用いる手がかりや方法)には、1音や言葉(聴覚刺激)、絵や写真(視覚刺激)、3モデルの提示、4手をとって具体的に教えるなどがある。

 プロンプトを用いて行動連鎖を完成させた後に導入したプロンプトを徐々に取り除く事は、フェーディングと呼ばれる。フェーディングが完了すると、子供の行動は、行動連鎖を日常的な弁別刺激のもとで遂行することができるようになっていることとなる。

3 実際の指導場面で有用な方法論

プレマックの原理

 プレマックの原理とは、正規頻度が多い、または行なっている時間が長い行動や活動(高頻度行動)は、正規頻度の少ないまたは行っている時間が短い行動や活動(低頻度行動)の後に行うことによって、先に行われた行動の強化刺激として機能するというものである。

 つまり、子どもが好きな行動は、苦手な行動の後にすることで、苦手な行動の取り組みを促すということになる。

 この場合、順番が重要で、逆にしても効果は無い。

 プルマックの原理は、実際の指導時間内の課題の順序の決定や時間のマネジメントを考える上で非常に有用である。

トークン・エコノミー・システム

トークンとは、ゲーム等で用いられるコインを指している。このトークンを事前に設定された比率に基づき行動に対して提供することで、行動を形成・維持する方法をトークン・エコノミー・システムという。

 トークンは、好きなものや、活動(支持性強化刺激)等と交換できることが約束されており、このことがこの方法の有効性の鍵となっている。

 形成・維持したい行動の出現にトークンを渡すが、減少させたい行動の生起に対して一定の比率でトークンを返還させる方法は、レスポンスコストと呼ばれており、いわゆる罰金の制度である。

 トークン・エコノミー・システムにレスポンスコストを導入する場合は、このシステムが機能していることが重要で、行動の生起を抑制するだけの枠組みとして子どもが捉えるようになると機能しなくなることが多い。

 あくまでもある行動が明確に評価されると言う枠組みが重要であるため、レスポンスコストの導入には、慎重な検討が必要である。また、このシステムを使って子どもと関わるときは、具体的な行動目標やルール、強化の比率や支持性強化刺激との交換について明記された契約書を作っておくことが望ましい。

 

以上。応用行動分析研修を受けてのまとめになります。

今後も研修を受けた際に記録を残していきたいと思います。